南通にて その２ 遊 佐
皆様、梅雨明けの日本で如何お過ごしでしょうか？
当地、南通も梅雨空らしい雨もないまま梅雨が明け、夏らしい入道雲もないまま夏本番を迎えています。この季節感のないのがまた中国らしいと感心しています。
６月末に国家的行事である大学の入学試験が終わり、今は我が省からどこそこの名門大学に何人合格したとか、名前と出身学校、得点一覧が連日新聞をにぎわす反面、不合格となった人たちの落胆振り、挙句の果てには親子での自殺などの痛ましいニュースが紙面に踊っています。この季節の悲喜こもごもは日本以上の社会的関心事のようです。９月が新学期ですからこの騒動もそのころには終焉を迎えるのでしょう。
さて、特派員の仕事ですが、当地に赴任後、はや３け月が経過しました。本来なら得意の中国語を自由自在に駆使して、トクダネを求めて走り回っているはずでしたが、現実は往々にして意に反するのが世の常識とかで、あっちにヨロヨロ、こっちにフラフラで颯爽たる活動を期待している皆さんには知られたくない醜態続きの毎日です。
とはいえ、腐っても鯛は鯛、記者は記者苦肉の策で、南通生活編なるものをお届けすることにしました。ご清聴、いやご一読ください。
１；天の半分を支える中国女性は強し。
毛沢東の言葉である。この言葉を聴いた中国女性は、我が意を得たりとばかり、纏足を脱ぎ捨て、男顔負けの蟹股で闊歩しだしたのである。
その結果は？ 先日街角でみた光景である。（か弱き女性？にカメラを向けるほどの度胸はなく、写真なし）
一人の中年女性が、二人の長身の公安（警察官）を相手に座椅子を振り回し立ち回りを演じていた。周りははや黒山の人だかり。身なりからして靴磨きのおばさんらしいが、騒動の原因は分からない。警察官の手を振りほどき、椅子を振り回す。警察は押さえ込もうとするが敵も必死で抵抗、警察もたじたじで押され気味、結末は見なかったが中国女性の強さを見た。決して中国女性と争ってはいけないと肝に銘じた。
そしてその２、昼の１２時ごろ、南大街という日本なら銀座のような街の真ん中で１８，９歳ぐらいの男女が殴りあいの喧嘩の真っ最中である。こんな面白いものを見逃す手はないと、人ごみを掻き分け最前列で見物させてもらった。
殴り合いとはいうものの、口から泡を飛ばしての口撃と殴るのはもっぱら女性のほうで男性は無言で女性の肩を押さえつけ飛んでくる左右の拳を必死に避けている。女性は手では効果がないとみたか、ハイヒールを履いた足で男性を蹴り上げ始めた。
超ミニスカートの若い女性が長い足を使っての攻撃である。これは見ものでないはずがない。これは効果があり、男性は腰を引いて避けようとするが距離が開けば足の攻撃はなおやりやすくなる道理である。だが女性は最も効果的と思われる股間に対する攻撃は遠慮したか、蹴る位置をわずかに左右にずらしている。中国女性でも思いやりはあったのだ。これも喧嘩の原因、結果は確認できず。
かくして中国の天の半分を支える女性の強さを知らされた。
２；交通事情
中国には交通法規がない。いや、あるにはあるのが守らないからないのと同じなのだ。
道路は渡りたい人が、渡りたいときに渡ればいいのだ。信号はお飾り程度、無視は当たり前、かくしてテレビは連日交通事故の悲惨な現場写真を流し続けることになる。
忘れられない思い出がある。南通に来て１０日目、初めて訪問した取引先で初めて言葉を交わした現場担当者が翌日帰宅途中、車にはねられ亡くなった。２８歳の若さで子供は生後２ヶ月であったと言う。今でも頭を離れない。
メイン道路は片側４車線で道幅が１００ｍ、渡るにはコツがある。渡ると決めたら、車が来ようと、こまいと関係なく、ゆっくりと一定のリズムで渡り始める。止まってもいけないし、後退するなどもってのほか、相手の車はこちらの速度を計算し、前を通り過ぎるか、後ろを通るか判断する。後の結果は神のみぞ知るである。
日本では見込み運転は厳禁だが中国では見込み運転が常識なのだ。
個人の交通手段は、バス、自転車、電動自転車、人力車が中心で歩行者は極めて少ない。
主流が電動自転車で、特に女性に人気がある。エンジン音がなく音もなく近づくので危険この上ない。人力車は３元（４５円）で近場の利用は便利で市民の足として大活躍中。
小生も近場の買い物にはもっぱら人力車のお世話になっている。
３；市民生活
① 中国人の朝は早い。近くの公園には早朝４時半ごろから三々五々老人が集まりだす。中国は日本にも勝る老人天国である。健康維持のための運動に汗を流す人、バドミントンを楽しむ人、太極拳、近代体操にいそしむグループ、おしゃべりを楽しむ人たちと、その行動様式は多様である。他人の目は余り気にしない。６時半を過ぎ、太陽が昇り日が差すといつの間にか、人影が消えていく。
消えた人たちの日中の行動は？ 街中の至るところに、たむろする格好の場所がある。そこには小さな四角いテーブルが置かれ、４，５人のおばさんたちがカードゲームに熱中している。掛け金は一人一日最大５０元が上限とか。
たしか中国は賭博禁止の世界であったはずだが？
②爆竹協奏曲 赴任初夜からその洗礼を受けた。深夜に近い１０時、突然近所で地鳴りを伴う大爆発音が轟いた。さてはテロかと室内で身を硬くしていると、続けざまに爆発音、どうも花火のようだ。翌日朝からまた洗礼である。迷惑な話である。聞くところによると、誕生や誕生日、結婚式、お店の開店の祝砲と嬉しいこと、喜ばしいことのあるときは必ず爆竹で祝うよし。その爆竹騒ぎの傍では、白装束に身を固めた一団が厳かな葬式を進めている。互いに遠慮しないのが中国方式のようである。
③深夜の招かれざる客 アパートの階段の照明は消してあるのが常識か。
訪ねてくる客があるはずもない我が家である。ひっそりと不在を決め込んだが、止むことなく叩かれる。妻などは警察に電話しようなどと言い出す。仕方なしに、ドアを押さえつつ、シェイア？（誰ですか）と声をかけると、とたんに音は止み、ひっそりと階段を下りていく足音が聞こえる。間もなく、階段を上る足音が聞こえ、上の階でドアを開ける音して静かになった。暗闇で自分の家が分からなくなったようである。
④お金の話。 お金について細かいことは言いたくないが、このところの円安は日本人の懐を直撃している。
交 朋 友 （江蘇省南通市にて） 鈴 木
地図で見ると上海から南通へは、長江を渡ればすぐのように思ったが、何と遠いこと・・・
日本でたとえると東京から仙台までの距離と同じらしい。タクシーは一般道を120ｋｍ／ｈでぶっとばし、あげくのはては河川の土手を走り出す。スリル、スピード満点。運転手が言うことには「ただ今一番美しい景色だからよーく見ておけ！」とのこと。確かに糸杉の並木道が延々と続き、田舎ののどかな風景だが、道幅が狭く、対向車が来るとすれ違いがとても大変。あわやこちらの車は川に落ちそうになったりとても景色どころではない。
カーフェリー乗場でも我々の車は整然と並んでいる列を無視し全く別の所へポツンと一台停め運転手は料金所へと消えた。しばらくしてアイスキャンデーをかじりながら現れ、思い出したようにトランクからお湯と化したミネラルウォーターを我々に手渡した。もちろんフェリーにはｲの一番で乗った。エアコンのきかない船では甲板でホットとする。長江を横断する我々の船と長江を南京方面に遡る大量の黒い船団は今にもぶつかりそう。何度も汽笛を鳴らし、目の前の行列のわずかな隙間を縫って行くさまは“みごと”と言うしかない。フェリー乗船時間は30分ほどだが、私にとっては３時間位に思えた。
・・・続く
