武田 光司
この七月北海道へ出掛けた。犬三匹、女房との自動車による風来、横行の旅で、立ち寄った先に釧路湿原の鶴居村がある。北海道のシンボルである木、花、鳥はそれぞれエゾ松、はまなす、タンチョウだが、この三つが一ヶ所で見られる場所としてこの村は注目されている。タンチョウは夏には湿原の奥深く子育てをしていて、人里で姿を見ることは余りないそうだが、幸いなことに鶴見台という場所で四羽、眼に出来た。悠然と餌をついばむ様子は、こちらの気持ちを平安にした。宿の主人の説明だと、タンチョウもその子育ては大方の自然界の動物と同様、きめこまかな愛情で溢れていて胸を打つそうだ。マイナス二十度にもなるこの村の厳しい冬、北風に自分の身をさらして子を守るタンチョウの親鳥には教えられますと話していた。
そんな親鳥にも九ヶ月の子育てが終わると一転して子を突き放すそうだ。餌を与えないばかりか、自分の身辺というか生息域から追い出そうと威嚇するとのこと。こんな土産話を留学生にしたらこんな話が出てきた。「中国では結婚すると、双方の親からよく電話が掛かってきて様子を聞いてくれます。私達は留学しているので手紙が多いのですが、私達も手紙を出します。日本の家族は変ですね」という。私の世代や私の育った家族での経験では、結婚は一人前になった証明で、一人前の人間の営みにたとえ子とはいえ親が「介入」するのは失礼というものという意識がある。便りのないのが無事な便りと痩せ我慢するのも親の愛情という配慮もある。子の方にも親頼りを恥とする見得もある。こんな話をしたが留学生は納得しかねる顔である。家族の強い絆があってこそ「突き放し」と現代の家族関係の風化の色濃い状況でのそれとは似て非なるものとは言える。大家族主義の残る中国からの留学生の指摘は、その根本を本当は突いているのかも知れない。
私の故郷紹介
江
エキゾチックな「魔都」、現代中国経済の牽引車、人口一千四百万人の国際都市、この「上海市」が私の故郷です。
黄浦江を挟んで、二十一世紀東アジアの経済センターを目指して、巨大な都市開発を進めている上海市東地区の対岸は、浦西地区の外灘（バンド）である。
往来する自動車、自転車のラッシュ、こちらあちらの高層ビルの建設ラッシュ、そして、急ぎ歩く人々のエネルギー、「二十一世紀は中国の時代」と息吹きを世間に感じさせながら、旧租界時代のノスタルジックな面影を残し、上海の歴史の顔を見せている。
上海は大昔小さな漁村だった。西暦七五一年上海の前身「華亭県」が誕生。地理的に恵まれて商業が隆盛市文化も繁栄した。一二九一年に「上海県」が作られ、当時には「人跡が雑踏して、舟運の便が進み、商人が雲の如く集まる」重要な商業港湾となっていた。黄浦江によって二分されている上海市の西側（浦西）は、一九二０年〜三０年当時、アジアの経済、金融、貿易のセンターとなった時もあった。東側（浦東）は、一九九０年までに、自然に恵まれ、農作物を作る江南田園のままであった。
地の利の良い上海は、昔から世界に向かうのに格好の条件を満たしていた。アメリカ、ヨーロッパ、そして日本等世界の国々への留学生の多くは上海から出発した。上海人の足跡は世界一二０ヶ国に及び、その中からノーベル賞受賞者まで多くの優秀な人材を輩出した。国際社会に歩み出た彼らは上海のみならず、中国全体の進歩と発展に大きな影響を及ぼした。
中国の玄関と言われている上海は、中国海岸線の中ほどに位置し、水上交通の「Ｔ」字形の交差点にある為、各国との交流基地になっている。世界一六０ヶ国地域の六００余りの港との間を定期船が運行する。空の便は「上海虹橋国際空港」が国内最大の空港の一つであり、国内線は六０余りの都市に、国際線は世界三０数ヶ国の地域に直行で通じる。今年一０月に「上海浦東空港」のオープンを予定しており、上海の空の便が一層便利になることが間違いないでしょう。陸上交通の基点でもある上海は、上海〜南京、上海〜杭州この二本の基幹道路が中国各地の基幹道路とつながっている。
上海は現在日本の横浜市など二四ヶ国二八都市と友好都市を締結し、二四ヶ国の領事館と二０数社のマスコミ機関が駐在し、数万もの外国人が生活している。中国を訪れる観光客の六０〜七０％が上海を訪れており、豫園、玉仏寺、上海市博物館、外灘、近郊の淀山湖、周庄など観光名所が沢山あり、重要な観光名所ともなっている。
どうか一度この幻の都市上海市へ行って見ませんか。きっと貴方だけの新発見と望外の収穫があると信じます。
最後に、躍進する現代中国のエネルギーが思いっきり満喫出きるスポットを以下簡単に紹介しよう。
エネルギッシュな繁華街――南京路を歩こう
南京炉はショッピングやグルメの楽しみがギッシリ詰まった市内東西に走るメインストリート。有名なデパート、各種の専門店、高級ホテル、無数のレストラン等が立ち並ぶ上海一の繁華街ファッションストリートを散策しよう。
東方明珠塔から上海のパノラマを一望しよう
浦東で聳え立ち、ユニークなデザインが目を引く四六八メートルのテレビ塔は、アジア一、世界でも三番目を誇る。このランドマークに登り、上海の絶景を肌で感じよう。
船上から外灘の夜景を楽しもう
ライトアップされた外灘の夜景は是非見ておきたいスポットの一つ。黄浦江でナイトクルージングを楽しみながら、船上からの華やかで幻想的な眺めを堪能しよう。